新規事業立ち上げの際には先立つ資金が必要になります。
資金調達の手段は数多くあるので全ての詳細に精通するのは大変ですが、経営者としては代表的な手段の概要については網羅的に押さえておきたいところです。
本章では新規事業立ち上げの際にお勧めできる資金調達方法をいくつか紹介していきますので、ぜひ参考になさってください。

日本政策金融公庫の公的融資

日本政策金融公庫の公的融資

新規事業立ち上げ当初は実績や信用が薄いため銀行からの融資が望めないこともあります。
一方で新規事業立ち上げ時は時間的にある程度余裕があることが多いと思いますから、手続きに時間がかかりがちな公的支援の活用をぜひ考えたいところです。
日本政策金融公庫は銀行のように利益を追求しない国が運営する金融機関で、新規事業開始時に利用できる新創業融資があります。
無担保、無保証人で利用できるという嬉しい施策で、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象です。
融資限度額は3,000万円で、そのうち運転資金は1,500万円となっています。
基本的に自己資金が創業資金総額の10分の1以上を占める必要がありますが(自己資金要件)、創業塾や創業セミナーなどを受講した人、これまで勤めた経験のある事業と同種の事業を開始するなど一定の場合には自己資金要件を満たしていると見なされる特例もあります。

信用保証協会による制度融資

日本政策金融公庫の公的融資

同じく公的な支援施策として信用保証協会の制度融資を検討することもできます。
創業時には信用が薄く保証人や担保が無いと民間の銀行では借り入れが難しいところ、信用保証協会が公的な保証を提供することで銀行が融資に応じやすくなります。
信用保証協会を利用するには一定の保証料の支払いが必要ですが、自治体から保証料の一部を補填してもらえることもあります。
この保証により、万が一返済が焦げ付いた時には信用保証協会から銀行に返済がなされるので、銀行は安心して貸し出しに応じることができるようになります。
ただし、返済を肩代わりしてもらっても債務者として責任が消えるわけではありません。
代位弁済がされた後は信用保証協会が債権者となって取り立てを行うので、引き続き債務者は返済の義務を負います。

マル経融資

マル経融資

マル経融資は日本政策金融公庫が提供する融資の一つで、地元の商工会や商工会議所を介して経営指導を受けることを条件にしてなされる貸付です。
融資限度額は最大2000万円です。
一定期間経営指導を受ける必要があることと小規模事業者のみの適用であること、そして事業実績も1年以上必要となるため、事業実績のない真っ新なスタートアップ企業がすぐに利用することはできません。
ただし既存の事業者が既存事業とは別のアイデアを形にするために新規事業を立ち上げる場合はすぐに利用できることもあります。
また事業実績が全くない真っ新なスタートアップ企業であれば、マル経融資を利用できるようになるまでは創業融資や制度融資などで乗り切るといった活用も検討できます。

担保を活用した銀行融資

担保を活用した銀行融資

もし不動産など担保に出せる資産があれば、これを抵当に入れて銀行から融資を受けることもできます。
担保があれば事業実績がなくとも融資を引き出すことが比較的容易になります。

事業用資産を活用したリースバック

事業用資産を活用したリースバック

担保価値が高い不動産などの資産がない場合、工場機械などの動産にも担保価値を見出せる可能性があります。
ただし動産は担保価値がかなり低く、銀行が担保としての利用を認めない可能性があります。
その場合、事業用資産を売却したうえで、以後は賃料を払って利用を続けるリースバックも検討できます。
リースバックではまとまった売却代金が入るので、これを事業資金に活用できます。

ファクタリング

ファクタリング

担保に利用できるものが無い場合、売掛債権などの流動資産を売却して事業資金化することもできます。
一定の事業実績が無いと売掛債権は発生しませんが、新規事業者でも掛け取引があれば売掛金を持っているので、必要に応じて資金化できます。
担保資産がなく信用面で借り入れもできない場合、短期間で資金調達する方法としてはファクタリングしか検討できないことも多いです。
弊社では新規事業者の方からのファクタリング要請にも積極的に応じていますので、必要な場面でぜひ検討頂ければと思います。

クラウドファンディング

クラウドファンディング

面白いアイデアや新規性のある事業を考えているケースではクラウドファンディングの利用も検討できます。
広く一般の個人あるいは企業等の法人から小口の資金を募るもので、基本的には返済の必要がない資金として提供を受けることができます。
資金提供の見返りとして、新規事業で生み出される商品やサービスの一部を還元するのが普通です。
クラウドファンディングを利用するにはプラットフォーム事業者に登録するのが一般的ですが、自社単独で進めることも可能です。
近年はこの方法で多くの新規事業が成功しており、今後も将来性があります。
地域性のある事業構想、先端事業、高齢者や障害者などの福祉事業などと相性が良く、必ずしも営利を強く訴求しなくても投資家の目を引くことはできます。
チャンスがありそうでしたらぜひ検討してみましょう。

まとめ

この回では新規事業立ち上げの際にお勧めできる資金調達方法をいくつか挙げて見てきました。
信用や実績が薄いスタートアップ事業者は民間銀行からの借り入れが難しいことが多いので、一つは公的な支援機関の利用を考えることが勧められます。
実務開始までに時間的な余裕があれば準備を整えて手続きをとってください。
公的機関に頼らない手法もいくつかあり、可能性のあるものを組み合わせることで効果的な資金調達手段となります。
一つの方法にこだわる必要はないので、臨機応変に検討してください。