お金は市場経済の血液であると同時に、個別企業のエネルギーの源でもあります。

企業内の資金が枯渇すると活動エネルギーが失われることから、自社商品など価値の創造ができなくなるのはもちろん、取引の停滞や消失、最悪は倒産ということになってしまいます。

必ずしも赤字でなくとも、一時的な資金枯渇によって黒字でも倒産してしまうことがありますから、企業にとって資金調達は非常に重要な問題です。

資金調達といっても個別の手法は色々ありますから、今回は企業の資金調達方法の種類を色々と考えてみましょう。

個別具体的な資金調達手段は色々とあるので、ここでは「売る」「借りる」「募る」「その他」の4つのタイプに分けて見ていきたいと思います。

「売る」資金調達

「売る」資金調達

まずは何かを売って現金化を図る方法です。

自社の在庫を売る

在庫を抱えることは経営にとってダブルパンチの痛手になるので、極力避けなければなりません。

販売戦略の失敗による売上高の損失に加えて、在庫の保管や管理にかかるコストが詰みあがっていくからです。

保管コストを考えれば、相当値を下げてでも売ることを検討すべきです。

同時に、通販など販売チャンネルの多様化によって在庫を減らす努力も必要です。

不要な資産を売る

自社の販売商品ではなく、自社の資産として保有している休眠資産を売ることも有効です。

企業運営に必要な資産は売れませんが、活用していない、なくても困らない資産があれば売却対象にすることができます。

不動産の他、有価証券類なども有望な売却対象となります。

③事業譲渡

企業内で行われている事業を他社に譲渡するという方法もあります。

営業権譲渡とも呼ばれますが、事業に必要な物品などの財産だけでなく、取引する顧客なども譲渡対象の財産に含まれてきます。

「〇〇の事業で利益を上げる権利の一切」を譲渡するというイメージです。

不採算部門を切り離して売却すると特に有効です。

④売掛債権の譲渡(ファクタリング)

掛取引から生じる売掛債権は「将来お金を手にすることができる権利」ですから財産的価値があります。

これを売却対象にするのがファクタリングです。

当社も主力事業として手掛けていますので、売掛債権をお持ちの企業様はぜひお声掛けください。

⑤手形割引を利用する

手形取引も国内でよく利用されます。

手形(約束手形)は決められた期日に金融機関に持ち込んで換金することができます。

しかし当該期日まで待てない事情が発生した時には、銀行や手形割引に対応する業者に持ち込んで、手数料を支払った上で現金化することもできます。

イメージとしてはファクタリングの売掛債権の譲渡に似ています。

「借りる」資金調達

「借りる」資金調達

次は「借りる」分野の資金調達法を見ていきます。

①親族や友人知人から借りる

プライベートな関係をビジネスに持ち込みたくないという人も多いと思いますが、特に創業まもない会社の社長さんが親族など身内から借り入れすることは普通に見受けられます。

友人知人の場合は身内よりも厳しく見られますが、親族や友人知人から資金を借り入れする最大のメリットは利息や弁済期限の面で相当優遇してもらえるところにあります。

身内や友人は営利性をほとんど追求しませんから、相当低い利息あるいは利息なしでの貸し付けを頼むこともできるでしょう。

弁済の期限を長めに設定してもらうこともできるので、利用勝手としては価値のある方法です。

②公的な融資制度を利用する

企業活動は国の経済を支える原動力ですので、資金調達に関しては公的な支援も用意されています。

政府系では日本政策金融公庫が有名で、特に創業したてで信用や実績が乏しい会社にも融資をしてくれます。

地方自治体も金融機関に保証を行うことで、地元の中小企業が融資を受けやすくする支援を講じていますから、これを活用することもできます。

また信用保証協会も中小企業が融資を受ける際に保証を取り付けることで、金融機関のリスクを減らし融資を受けやすくしてくれます。

③銀行融資を利用

銀行からの借り入れは厳密に分類すると、銀行と融資対象の二社間だけで進める形(プロパー融資)と、前述した地方自治体や信用保証協会などの保証力を活用した融資の二通りがあります。

プロパー融資はすでに実績があり、経営も安定している企業を対象にすることが多いです。

創業まもない企業や実績が乏しい企業は銀行単独では不安があるので、自治体や信用保証協会の保証力を加えて融資を進める形になります。

④ビジネスローンを利用する

ビジネスローンは事業性のある貸し付けで、担保や保証人が不要でスピーディな融資を受けることができます。

その代わり金利が高く設定されるので、この点の検討を要します。

ビジネスローンは銀行やノンバンクが提供していますが、どちらかというとノンバンク系の方が好んで利用されるようです。

銀行系はノンバンクよりも金利面では有利なことが多いですが、ノンバンク系と比べると審査の柔軟性が欠けることや融資された資金の使用用途の制限が強めに出るため、利用勝手の良いノンバンク系が好まれることが多くなります。

⑤不動産担保ローン

不動産担保ローンは保有する不動産を抵当に出して、その信用力を利用して貸し付けを受ける手段です。

銀行だけでなくノンバンクも積極的に不動産担保ローンを扱っています。

不動産は複数の抵当権を設定できるので、融資相手が納得すれば一つの不動産を複数の融資案件で抵当に出すことができます。

ただし、もし融資の弁済ができなくなった時には抵当に出した不動産は取り上げられてしまいます。

「募る」資金調達

「募る」資金調達

次に、資金を会社の内外から「募る」資金調達法を見てみます。

①社債の発行

国が国債を発行し資金を募るのと同じように、企業は社債を発行して外から広く資金を調達することができます。

ただ、社債の公募は費用がかかるので、中小企業の場合は少人数私募債という方法を用いるのが主流です。

これは身内や取引先など限られた関係者だけに社債を購入してもらうもので、コストも少なくて済みます。

社債は国債と同じように、出資者に対しては利息を載せて返済する必要があります。

②株の発行(増資)

第三者割当の株式を発行して購入してもらう方法です。

株式は社債と違って返済の必要がありませんので、社債よりも安定した資金源として見ることができます。

その代わり、株式の購入者はいわゆる株主として会社の経営権に影響を与えることがあります。

社債の保有者は金銭的な資金提供にとどまるので経営権には影響がありませんが、株の場合は社の運営に影響が出る可能性があることに留意します。

近年は株式の購入者に個人投資家も多く参画しており、こうした人たちを「エンジェル投資家」などと呼ぶこともあります。

エンジェル投資家は主に将来性が非常に強いベンチャー事業を投資対象にします。

③従業員持ち株制度を利用する

会社の株を外の投資家に購入してもらうのではなく、自社の従業員に購入してもらう持ち株制度を導入することもできます。

自社従業員にとっては費用負担がかかるため不満が出る可能性には留意が必要ですが、自分の会社を盛り上げていこうというモチベーションの向上につながる利点があります。

④クラウドファンディング

近年はインターネットを活用したクラウドファンディングによる資金調達も人気です。

投資家にとっては小口で参加できるメリットがあり、企業側は広く世界から資金を募ることが可能です。

特徴的なサービスや商品、将来性のある計画などに対する先行投資的な側面があるものです。

投資してくれた見返りとして、開発した商品をプレゼントしたり、サービスの利用権を付与するなどの形で投資家に魅力を提供します。

その他の資金調達

その他資金調達

①助成金や補助金

厚生労働省や経済産業省などは、それぞれの府省の目的達成のため、これに見合う事業や経営スタンスに対して助成金や補助金を交付する事業を行っています。

助成金や補助金は実際には数多くの種類があり、それぞれ利用条件等が異なります。

条件を満たして申請しなければならない手間がかかるのが難点です。

こちらの「ミラサポ」では様々な助成金や補助金を検索できます。

https://map.mirasapo.jp/

②債権回収

取り引きの中で入金が遅れている債権があれば、これを強制的に回収にいくという手もあります。

入金が遅れている売掛債権は個別に督促状を発して履行を促し、応じなければ最終的に裁判を起こして債権を回収するということも考えられます。