一昔前よりは日本国内でも女性の社会進出が大幅に進んだとはいえ、「ウチの会社はいまだに男性社会で」と嘆かれる女性は多くいらっしゃいます。

一方で、女性の起業家の数はかなりの勢いで増加しているのも事実で、女性経営者ならではの視点で活躍される方も確実に増えています。

本章では経営者になってみたい、経営に興味があるという女性に向けて、起業の魅力やメリット・デメリットなどについてお伝えしていきます。

女性の起業には追い風が吹いている

近年、我が国では女性の雇用環境やワークライフバランスの改善などに向けた意識改善、啓発が盛んに行われています。

自治体など公的な機関が様々な取り組みを見せているので、皆さんもごく身近なところで見聞きしたことがあるはずです。

また被雇用者としてだけではなく、経営参画を目指す女性を後押しする取り組みも多くなされており、国内では女性の起業を後押しする社会的雰囲気が醸成されています。

現に、帝国データバンクが実施した「全国・女性社長分析」によれば、2019年における女性社長の比率は7.9%、1989年に実施した調査で4.3%だったのに比べて二倍とまではいかずともそれに近い増加率です。

年齢別では30代の起業が多くなっていますが、他の年齢層も平均的にまんべんなく女性起業家が誕生しており、業種別では女性の視点を生かしやすい生活関連サービスや小売り、卸売業、フィットネス関連、保育関連などが人気のようです。

女性が起業するメリットは?

では女性の起業を後押しする昨今のトレンドも含めて、起業するメリットについてみていきましょう。

①女性消費者の目線が持てるので指示される

女性が主な消費者となる産業では、やはり女性目線を意識した経営企画が可能な女性社長の方が消費者心理をがっちりと掴みやすいのは事実でしょう。

例えば女性だけのフィットネスクラブ運営や、女性用コスメなどの商品開発・販売などは女性社長の方が圧倒的に有利でしょう。

必ずしも女性消費者だけはない産業でも、男性とは違った目線で取り組むことで市場からの指示獲得につながります。

②女性の起業を後押しする支援策がある

国や各自治体で様々な取り組みを見せていますが、例えば日本政策金融公庫で用意している「女性、若者/シニア起業家支援資金」を利用すると、最大で7200万円の融資を受けることができます。

お住いの自治体で独自に運営している支援策もあると思いますので、ぜひ調べてみることをお勧めします。

③ライフプランを自分主導でたてられる

経営者には定年がないので、自分のライフプランを自分主導で立てることができます。

夫の定年に左右されることもなく、若い方であれば自分の出産や子育てなどのライフイベントも自分自身で時期をコントロールするなど、都合の良い人生設計が可能です。

もちろん勤め人の方によくある「産休から戻ってきたら自分の席がなくなっていた」などの不利益もありません。

経営者のワークライフバランスは自分自身で確立させることができます。

④圧倒的に世界観が広がる

経営は困難を伴うこともありますが、うまく軌道に乗せて事業運営を行えばこれほど楽しいことはありません。

それまで勤め人だった方は、自分の手で経営を司る快感と喜びに震えることでしょう。

主婦の方が起業するケースも多くなっていますが、どちらにしても経営者になれば目線や視点が上がり世界観が圧倒的に広がります。

⑤女性起業家・経営者のグループ活動が多い

外部からの支援の他に、同じ女性の先輩起業家や先輩経営者とのつながりを持ちやすいのも利点です。

成功した先輩起業家などは勉強会や経験談を披露する機会を提供していることが多いので、こうしたグループに参加することで経営者としてのものの見方や実務的なノウハウを吸収することができます。

女性が起業するデメリットは?

メリットだけでなく、起業には以下のようにデメリットも付きまといます。

①リスクは覚悟しなければならない

経営には様々な方面のリスクが必ず付きまといます。

融資を受ける際の代表者保証や従業員管理、法令順守など、資金面、人材面、法令面等々、社長になれば他方面に気を配らなければなりません。

②当初は会社優先の生活になる

経営者には責任が求められますから、順調に軌道に乗るまではどうしても会社優先になることが多くなるでしょう。

小さなお子さんがいる場合は、経営が軌道に乗るまで親御さんのサポートを受けたり、保育サポートを利用することも考える必要があるかもしれません。

とはいっても経営が軌道に乗れば自分の生活を優先することもできますし、社長自ら環境を整えれば授乳中の赤ちゃんと一緒に出社することだってできてしまいます。

③専業主婦からの転身はハードルが高め

昔は女性が学校を出たら専業主婦になるのが普通という時代もありました。

中高齢層の女性でこれまで会社に勤めた経験が無い人も、好きなことで起業を考えるのは十分可能です。

ただその場合、会社勤めの経験が全くないとビジネスの基礎的な部分もまっさらな状態ですから、経営戦略を描く前の段階で勉強が必要かもしれません。

労働基準法など人を雇う際の最低限の法律やビジネスマナーなどの習得に、先行して時間を割く必要があるかもしれません。

④女性ならではの苦労も

外部企業との折衝や取引の際、女性社長だからということで舐められたという経験を持つ人も少なからずいるようです。

ただ確固たる信念を持つ女性経営者の方は、このような場面でも堂々と対応し、「あの女性社長、やるじゃないか」を思わせて逆に味方につけてしまう人もいます。

全ては自分次第ですから、やる気と信念をもって臨めば何も臆することはありません。

まとめ

本章では起業や経営に興味がある女性の方に向けて、起業・経営の魅力やメリット・デメリットなどを一緒に見てきました。

現在、日本国内では女性の起業を後押しする施策が多く実施されており、一段と起業しやすい環境になっています。

経営には一定のリスクやデメリットもありますが、それ以上の楽しみ、喜びを実感することができます。

官民の双方で様々な支援策や勉強会が実施されているので、ぜひ機会を捉えてグループワークに参加したり、支援策の窓口に相談してみましょう。