法人にはいくつもの種類があり、ご商売をする前提で考えれば営利法人の立ち上げを考えることになります。

営利法人には株式会社や合同会社、合名会社、合資会社などがありますが、もっぱら利益を追求するのが営利法人の目的であり、責任でもあります。

一方、営利を目的としない法人もあり、こちらは非営利法人という括りになりますが、その中に宗教法人があります。

政治との関係で昨今何かと話題になる宗教法人については、税金面で優遇されるということで気になっている人も多いと思います。

本章では宗教法人の税金面のカラクリや設立方法などについて分かりやすく解説していきます。

 

 

■宗教法人とは

 

宗教法人とは教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成することを主たる目的とする団体が法人格を取得したものです。

株式会社などの営利法人と違い、最初から法人として設立されるわけではなく、まずは母体となる「団体」が先行して存在し、当該団体が法人格を取得してやっと宗教法人となります。

株式会社等は登記をすればすぐに設立できますが、宗教法人は主務官庁の「認証」を得なければ登記手続きが行えません。

関係する施設などが全て主たる事務所と同一都道府県内に存在する場合は都道府県知事の、それに止まらない場合は文部科学大臣の認証必要になります。

 

■宗教法人の設立は難しい

 

株式会社のように宗教法人が簡単に作れてしまうと色々と問題生じます。

純粋な宗教活動を目的にしていないのに、宗教法人を隠れ蓑にして悪事を考える輩が続出するでしょうし、宗教法人は下で述べるように一定の税制優遇措置が働くため国の税収が落ちることも考えられます。

そのため宗教法人を設立するハードルは高く、まずは上で見たように母体となる宗教団体が存在し、実際に宗教活動をしている実績が求められます。

これを確認するため2年~3年程度かけて主務官庁の審査を受けなければなりません。

従って宗教法人設立までは最低でもそれくらいの年月がかかるということです。

さらに条件がもう一つあり、団体が保有する財産管理の必要性があるということです。

法人格が無い場合、礼拝施設などの登記は誰の名義になるでしょうか。

関係者個人の名義とした場合、相続の際に権利関係で揉めることが予想されます。

法人格があれば長期的に安定して管理運営ができるので、ここに法人格の必要性が認められ、その場合は宗教法人の設立が認められます。

宗教活動自体は法人格が無くても行えますから、管理すべき財産が無ければ法人設立の必要性が無いとされるわけです。

■宗教法人は非課税ってホント?

 

「宗教法人は非課税だから得だ」と聞かれることがよくあります。

これは半分あたっていて半分間違っており、正しくは宗教活動から生じる利益は非課税である、という認識が正しいです。

お布施やお賽銭をもらい受けるような場合は通常は宗教活動の一環ですので、こうした性質の「儲け」には税金がかからないのです。

一方で、宗教法人でも営利性のある事業を行うことはでき、例えば宗教法人が所有する土地を使って駐車場を経営したり、仏壇仏具の販売業を積極的に行うようなケースでは営利性が認められることもあり、その場合は課税対象になります。

宗教法人だからといって全ての利益が非課税というわけではないのです。

ただし課税対象になる事業を行った場合でも、宗教法人は営利法人より優遇されます。

収益事業から生じた所得に対し800万円以下の金額については15%、それ以外の部分は19%の税率となるので、一般的な商社などの法人よりは税負担が低く済みます。

■宗教法人の設立手続き

 

では宗教法人を設立したいと考える場合、どのような流れになるのか見てみます。

①主務官庁に事前協議

まずは都道府県知事もしくは文部科学大臣を相手とし、法人設立に向けた事前協議が必要です。

この協議を経て、3年程度の活動実績を見てもらうことになります。

事前協議を行う前の活動実績については一切評価されないので、この点は留意を要します。

②運営報告

上記①の事前協議で取り決めた手順に従い、宗教活動の運営報告を実施します。

③法人設立準備作業

3年程度の活動実績が認められ認証を受けられる見通しが立ったら、宗教法人の規則策定や役員の選任、信者等に対し規則案を公告するなどの諸準備を行います。

④認証申請

公告の掲示期間満了後、主務官庁に認証申請を行います。

⑤認証通知受領

問題なければ主務官庁が認証書を発行します。

⑥登記

認証書の交付を受けてから二週間以内に、主たる事務所を管轄する法務局で宗教法人の登記手続きを行います。

⑦登記の届け出

登記した事実を主務官庁に報告し、宗教法人設立の手続きが完了します。

 

■まとめ

本章では宗教法人に関して税金面や設立手順などを見てきました。

税金に関しては宗教活動から生じる利益は非課税ですが、積極的な営利活動も可能であり、こちらから生じた利益は優遇措置はあるものの課税対象になります。

宗教法人の設立はその性質を考慮して簡単にはいかないようになっており、純粋に宗教活動を目的としていないと認められません。

営利目的を隠して宗教法人を作ることはできないので留意しましょう。