「決算」ではなにをどこに申告するのか分からない。

はじめての決算を迎える事業者様の多くは、このような悩みをお持ちです。

そこで、本記事では「決算申告の全体の概要」が理解しやすいよう、「決算について」「決算申告
で必要なもの」「決算申告はどのようにすればいいのか」
といったことについて紹介致します。

最初に申し上げますと、決算申告は複雑で情報量がとても大量です。

ですので、はじめての決算申告を迎える方に向けて、全体像の把握ができるような内容となって
います。

決算申告とはどのようなもので、なにをすればいいのか、それぞれ確認していきましょう。

決算申告の必要性

決算申告の必要性まずは、決算申告の概要について触れていきます。

・決算申告とはどのようなものか
・決算申告を行わなければならないのはなぜか

といったことについて説明していきます。

①決算申告とは

決算申告とは以下の2つを行うことを指します。

・株主総会を開催し、決算報告を行う
・決算申告書を作成し、確定申告を行う

これらの業務をまとめた呼称が決算申告です。

決算と聞くと、家電量販店の決算セールなどが思い浮かぶかたも多いのではないでしょうか。

決算とは一定期間での利益や損失を総計算したものを言い、「税務署・地方自治体」や「株主」に
申告、報告することを「決算報告」
といいます。

②決算申告を行う理由

また、上記の項目はそれぞれ会社法と、法人税法で定められいます。

会社法では事業年度終了から3ヵ月以内に株主総会を開催し、株主へ決算報告を行わなければ
なりません。

また、法人税法では事業年度終了から2ヵ月以内に決算申告書を作成し、税務署で確定申告
行います。

ちなみに、上場企業・大企業の場合は「金融商品取引法」に基づいて、決算報告書の開示をする
ことも決算申告に含まれます。

決算申告で必要なもの

決算申告で必要なもの今回は、はじめて決算申告をする方へ向けての内容ですので、上場企業や大企業が対象の「決
算報告書の開示」に関する決算申告の内容は省かさせて頂きます。

決算申告に必要なものには、「法人税法」と「会社法」で共通したものと異なるものがありあり、そ
の結果、「決算申告に必要なもの」と、一括りにしてしまうと把握し辛くなってしまいます。

そこで、「共通するもの」「法人税法」「会社法」それぞれに必要なものを分けて紹介していきます
ので、それぞれ確認していきましょう。

①決算申告で共通の「決算報告書」

まず、「決算報告書」は複数の提出書類をまとめたものを指します。

そのため、厳密に言いますと決算報告書が「会社法」と「法人税法」に全て共通している訳ではな
く、「決算報告書の一部」が共通して必要な書類となるのです。

以下の表は決算報告書全体の内訳となります。

①貸借対照表 法人税法、会社法
②損益計算書 法人税法、会社法
③株主資本等変動計算書 会社法、法人税法
④計算書類の附属明細書  会社法
⑤個別注記表  会社法
⑥事業報告書  会社法
⑦事業報告の附属明細書  会社法
⑧その他(次項にて詳細あり) 法人税法

上記の①~③の書類が「会社法」と「法人税法」に共通して必要な書類となります。

そして、④~⑦は会社法のみ、⑧は法人税法のみ必要な提出書類です。

②法人税法

法人税法の決算報告で必要なものは以下の通りです。

①決算報告書
②税務申告書(法人税、消費税、地方税)
③勘定科目内訳書
④事業概況説明書

②~④は、前項の表にある⑧の内容となります。

法人税法では決算報告書以外にも、提出すべき書類が多くあります。

③会社法

会社法の決算報告で必要なものは「決算報告書」です。

会社法では株主総会で決算書の報告または、承認をする必要がありますので、決算書を事前に
準備する必要
があります。

決算申告の期限や提出先と注意点

決算申告の期限や提出先と注意点「決算申告を行う理由」でも触れましたが、決算申告の期限や提出先は「会社法」と「法人税法」
によって期限が異なります。

そして、提出先も以下のように異なります。

提出先 期限
会社法 株主総会 3ヵ月以内
法人税法 税務署、地方自治体 原則2ヵ月以内

ここで疑問となるのが、株主総会の前に法人税法の期限がきてしまうこと。

株主総会での決算承認がなされていない場合、法人税額が変更される可能性があるため確定
申告はできません。

そのため株主総会は、法人税申告を1ヵ月延長できる延長申請を行った場合を除き、2ヵ月以内
に行う必要があります。

株主総会を早めに終わらせ、余裕をもって法人税の確定申告を行いましょう。

決算申告の流れや必要な作業、準備

 決算申告の流れや必要な作業、準備.jpg次に、決算申告の詳しい流れや必要な作業、準備しなければならないものなどについて見ていき
ましょう。

①決算申告の流れ

決算申告は、事業年度終了月の翌月から準備を始めます。

事業年度終了月翌月まで(3月決算なら4月)
①期中での毎日の取引の記録・整理
事業年度終了月翌々月まで(3月決算なら5月※延長申請時のみ6月)
②決算整理
③決算整理後の手続
④決算書の作成
⑤決算書を監査役へ提出
⑥株主総会
⑦税務申告書の作成・申告
⑧納税

決算申告の流れは上記のようになっています。

②決算申告の準備に必要な作業

また、決算申告の準備に必要な作業には以下のようなものがあります。

・債権および債務の残高照合、預金・借入金の残高の確認
・売上高の確定
・売上原価の算定
・仮勘定の整理
・経過勘定の整理
・各種引当金の設定
・固定資産の減価償却
・有価証券の評価替え
・繰延資産の償却
・消耗品勘定等の処理
・現金過不足の処理
・株主総会招集通知の作成発送
など

事業年度が終了すると、決算書作成のために売上高や債権などの確定、資産の償却など、多く
の作業
が待っています。

また、株主総会を行うための準備も同時に行う必要がありますので、株主総会招集通知の作成
や発送を行う必要もあります
ので、事前に決算申告のスケジュールを立てておくと良いでしょう。

まとめ

まとめ本記事のポイントをまとめると、以下のようになります。

・決算は一定期間の利益や損失を総計算したもの
・決算申告は「法人税法は2ヵ月」「会社法は3ヵ月」で申告、報告の義務がある
・決算申告は「税務署・地方自治体」や「株主」に申告、報告すること
・決算申告で準備するものには、「法人税法のみ」「会社法のみ」「共通するもの」がある
・法人税で申告する内容は株主総会で「承認」されている必要がある
・原則、決算申告は事業年度終了後「2ヵ月以内」に完了するのが望ましい

決算処理はとても大変な業務です。

税理士など、専門家に委託することで業務負担の軽減や、ミスの軽減もできますので、多くの企
業様は委託をしています。

ですが、決算申告では自分で行わなければならないことも多くありますので、日々の管理と申告
完了までのスケジュールをしっかりと行う
と、申告がスムーズに進むでしょう