会社の社長は経営者としての身分と、一個人としての身分の二つの側面を有します。
個人事業の場合は個人と経営の切り離しがないので、車を購入した場合は個人で使用する部分と事業で使用する部分を按分して、一部を事業運営上の経費にすることが可能です(家事按分と言います)。
これが法人を運営する社長の場合はまた違ってくるので、本章では法人を経営する社長を想定し、車の購入を考える場合に法人と個人どちらで購入すると良いか解説します。

■法人購入でお得になる?

高級車イメージ画像

初めに、おそらく多くの方が期待するであろう予想に対し、回答と注意喚起をしておきたいと思います。
会社は経費の計上が可能ですから、法人で車を購入した場合は必要な経費を全て会社持ちにすることができます。
これが法人の強みであり、これを期待して車を会社名義で購入したいと考えている人も多いと思います。
しかし、法人で購入した車は経営者と言えども個人で使用することは基本的にできません。
仮に個人で使用した場合は会社の経費を社長が個人で流用した形となってしまうため、税務署は計上された経費を否認することになります。

ただし実際には、小さな会社の場合はある程度の個人使用は黙認されることが多いのも事実です。
もちろん業務使用がメインである必要がありますが、例えばお昼ご飯を食べにちょっと私用で使う程度であれば問題ないことが多いようです。
ただしあくまで正規に認められる行為ではありませんから、表立って勧められるものではありません。

■個人名義でも状況次第で損金算入は可能だが・・

自動車経費イメージ画像

車の使用目的として、メインは個人使用になるが一部事業用に使うこともあるという場合、個人で購入した上で必要に応じて法人が使用することもできます。
ただし、社長個人の名義で購入した車を事業で使用する場合、経費を法人の損金に算入することは基本的にできません。
個人名義の車の経費を損金算入するには手続きが必要ですので手間がかかります。
方法としてはまず社長個人から法人に車を貸し出す形にすることが可能です。
無償貸与の場合でも使用貸借契約書を作成する必要があり、この手続きをとることでガソリン代などの経費を一部会社持ちにすることができます。
有償とする場合は賃貸借契約が必要で、会社から社長個人が賃借料を得ることができますが、所得税の対象になるのでこちらの税務処理の問題が出てきます。
個人名義の車を法人に売却することもできるので、何年か使用した後に新しく車を購入する時点で古い車を法人に売却することもできます。
その場合、法人側としては車の購入代金を経費にすることができますが、法人の税務処理上で全額を一気に経費計上できないこともあるので注意が必要です。

■業務用と個人用で分けるのが無難

車比較イメージ画像

個人で使用する車を法人で購入したいという希望が多く聞かれそうですが、結論としては業務で使用する車は法人で、プライベートで使用する車は個人で購入するのが基本であり、無用なトラブルを避けられます。
個人で使用する想定の車を法人に購入させ、運用経費を法人に持たせようとする試みは危険ですのでお勧めできません。
業務で車を使用する場合は必要不可欠な事業用資産ですので法人名義で購入しましょう。
法人で購入した場合は必要な経費を全額経費扱いにできます。
ガソリン代だけでなく、保険代や駐車場代、税金なども計上可能です。
加えて、車をリースとする場合はリース代を経費にできますし、購入した場合は減価償却によって経費計上ができます。
また法人で購入した車を私用に用いることは、上述したようにごく僅かな範囲であれば黙認されることがあるので、この意味ではお得かもしれません。
ただし余りに過ぎると税務署に目を付けられてしまうのでほどほどにしましょう。
ここら辺のさじ加減は、危険のない範囲にとどめられるように地元の税務署対応に詳しい税理士に確認してください。

■まとめ

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本章では法人を経営する社長を想定し、車を購入する際に法人と個人どちらで購入するべきか見てきました。
個人事業主と違って法人と社長個人が切り離される建前上、個人で使用するのであれば個人で、法人の事業用に使用するのであれば法人名義で購入するのが原則です。
個人使用が目的でありながら法人名義で購入しても、損金算入は基本的にできません。
法人名義で購入しても、ほんの僅かな程度であれば私的利用が許される可能性もあるので、税理士に相談しつつできるだけ有利な運用を模索してください。