結論から言いますと、比較する対象が複数あるため、どちらがお得なのかを決めることは難しいと言えるでしょう。

個人事業主と法人のどちらがお得なのかと考えた場合、比較すべき主な事項は「税金」「経費」の2つです。

しかし、「税金」も「経費」も内容が非常に複雑なものとなっています。

そのことから、「この場合はこちらのほうがお得」というようなことを安易に考えて行動をしてしまうと、後で後悔をしてしまうかもしれません。

そこで、本記事では個人事業主と法人の「違い」について詳しく解説をしていく中で、どちらがどのような場面で「お得」だと考えることができるのかについて見ていきたいと思います。

個人事業主と法人の違い①:【税金】

個人事業主と法人の違い①:【税金】

上の表の通り、個人事業主と法人では支払う税金が異なります

また、上記以外にも法人には「地方法人特別税」や「特別法人事業税」といった課税も。

この中で注目して見ていきたいのが、個人事業主の「所得税」「住民税」「個人事業税」と、法人の「法人税」「法人住民税」「法人事業税」です。

それぞれ具体的に見ていきましょう。

①個人事業主は収入が大きければ負担も大きい「所得税」

まず、「所得税」と「法人税」は収入に大きく関わる税金

個人事業主は累進課税なので、5%~45%と収入によって税額に大きな差があります。

一方、法人が支払う「法人税」の場合は収入800万円を境に15%か23.2%のどちらかに。

収入額に大きくかかわる税金には、このような違いがあります。

②複雑な「住民税」

まず、個人事業主の住民税は「均等割」と「所得割」の2つを合わせて支払い、「均等割」は約5,000円、「所得割」は10%程度。

法人も「法人住民税」という住民税を支払う必要があり、個人事業主と同じように「均等割」があることと、所得へ税率を掛けた法人税へ、さらに税率を掛けた「法人税割」があります。

しかし、法人の「均等割」「法人税割」は、企業の所在地や資本金、従業員数、開始する事業年度によって区分されるため、まとめて数字を出すことは難しいものです。

資本金1千万円以下の従業員数50人未満の事業所をおおよその指標とした場合、法人の均等割は「7万円」、法人税割は「約7%」。

個人事業主の住民税は所得に応じて税額も大きくなるという認識ですが、法人の住民税は適応用件が複雑ですので、税額は大きく異なります

③法人の負担が大きい「事業税」

事業を行うと「事業税」というものが、「個人事業主」「法人」ともに徴収されます。

しかし、事業税は個人事業主と法人で異なる税率が設定されており、法人のほうが多く徴収される仕組みです。

個人事業主には「個人事業税」として所得金額が290万円を超えている場合、業種によって3%~5%の課税が。

法人には「法人事業税」として各都道府県によってことなりますが、所得金額によって課税所得金額のおおよそ3%~8%程度の課税があります。

課税額としては、法人のほうが負担が大きくなりやすい傾向です。

個人事業主と法人の違い②:【経費】

個人事業主と法人の違い②:【経費】

原則的に考え方は同じでプライベートな支出は経費にできませんが、明確な違いがあるものは次の6つ。

①事業主の給料
②家賃
③生命保険料などの掛け金
④退職金
⑤出張に伴う日当
⑥個人事業主の交際費

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

①事業主の給料

個人事業主と法人の代表(事業主)では、「給料」の概念が異なり、経費の面でも違いがあります。

まず、個人事業主の場合、売上からさまざまな経費を差し引いた金額がお店の利益であり、事業主の給料です。

法人の場合は、役員報酬としてあらかじめ設定した金額が事業主の給料になり、「経費」に含まれます。

②家賃

居住用のみの賃貸場合、法人と個人事業主には大きな違いがあります。

法人の場合「住んでいる場所を社宅にする」ことで、家賃を経費にすることが可能です。

一方、個人事業主の場合は自宅兼事業所の場合のみ、事業スペースに限って家賃を経費とすることができます。

③生命保険料などの掛け金

法人の場合、生命保険料などの掛け金を、種類によって全額または半額など、多くの金額を経費とすることが可能です。

一方、個人事業主場合、4万円程度の個人で受けることができる生命保険料控除と同額となります。

そのようなことから、法人と個人事業主の経費の違いで大きく異なる部分だと言えるでしょう。

④退職金

頻繁に利用できるものではありませんが、法人の事業主であれば、事業をやめるときに退職金を事業主へ支給することができます

そして、事業主へ支払われた退職金は経費にすることが可能です。

⑤出張に伴う日当

法人の場合、事業主の出張に経費として日当を支給することが可能です。

個人事業主の場合は日当の支給はできません。

⑥個人事業主の交際費

個人事業主の交際費に制限はありません

一方、法人の交際費は800万円を上限に経費とすることができます。

個人事業主と法人の違い③:【信用】

個人事業主と法人の違い③:【信用】

法人のほうが社会的信用が高く、金融機関からの融資が受けやすい、取引先が増えるなどのメリットがあります。

理由として、法人は会社法などの法律に基づいて設立・登記がなされるため、特にハードルなく名乗ることのできる個人事業主よりも信頼できるためです。

融資を必要とした場合に、個人事業主であるがために必要額を用意できなかったということも少なくはありません。

法人であればビジネスチャンスの機会に期待できることから、お得だと考えることもできるでしょう。

まとめ

まとめ

法人と個人事業主のどちらがお得なのかを決めることは、これまで述べてきたように、判断する基準があまりにも多いために難しいものとなっています。

ですが、収入がとても多ければ「法人のほうがメリットが大きい」と考えることができるでしょう。

個人事業主と比較して、経費として算入できるものと、その額が多く、収入に対する税金の上限は法人のほうが低いことが理由として挙げられます。

また、資金調達が必要な場面では、社会的信用度の高い法人のほうが切れる手札が多くなるため、個人事業主よりも有利なのではないでしょうか。

とはいえ、個人事業主であれば手続きが法人よりも少なく、手軽といったメリットもあります。

重要視したいポイントを明確にし、「現在の事業」は法人と個人事業主のどちらが適切なのかを見極めましょう。