世界的な物資の流通停滞はコロナの影響は多少薄まったものの、ロシア・ウクライナ紛争の勃発で再び混乱状態となりました。
多くの分野で影響が出ていますが、建築業界では資材価格の高騰が続いており、建築需要に大きな影響を与えています。
この回では建築資材の価格動向を探り、今後の見通しについて見ていきたいと思います。

■建築資材の価格動向

建築資材イメージ画像

国土交通省のデータによると、2015年を基準とした建築費の動向は年々増加傾向にあることが分かります。
国土交通省はデフレーターという指標を公表しており、2015年の建築費を100とした場合の建築費の増減が分かるようになっています。
この推移をみると以下のようになります。

2015年
木造:100
非木造:100

2016年
木造:100.4
非木造:100.1

2017年
木造:101.9
非木造:102.3

2018年
木造:104.7
非木造:105.7

2019年
木造:107.0
非木造:108.1

2020年
木造:106.9
非木造:107.8

2021年
木造:115.9
非木造:113.9

2022年
木造:121.9
非木造:121.6

このデータでは全体的に建築価格は増加傾向にあることと、特に2020年以降の建築費が高騰しているのが分かります。
では建築費の高騰はどのような要因で起きているのでしょうか。

■建築資材の価格押し上げの要因は?

建築資材高騰のイメージ画像

建築費の高騰は以下のような複数の要因が指摘されています。

①ウッドショック

アメリカや中国で不動産需要が伸び、木材の需要が増したことから、大量の木材買い占めによるウッドショックが2020年に起きました。
日本は木材の60%以上を輸入に頼っているため、木材の高騰がかなり響いています。

②アイアンショック

建築資材となる鋼材は鉄鉱石を原料にして作られますが、鉄鉱石は世界的に不足気味です。
コロナ禍のリモートワーク等で住宅需要が世界的に増した状況で鋼材の需要が伸び、資材としての価格が上昇しています。
鋼材は住宅以にも使用されるので、需要に対して供給が不足気味であるとされています。

③円安

円安の状況では輸入方面で痛手を受けることになり、近年の円安は建築資材の輸入にダイレクトに影響を与えています。
日本は木材の60%以上、鉄鉱石についてはほぼ100%を輸入に頼っています。

④コンテナ料金上昇

コロナ禍でネット取引の需要が一気に増したことから、輸送にかかるコンテナの需要が増しています。
コンテナの奪い合いとなる中で輸送費用が上昇し、建築資材の輸入にかかるコストが増しています。

⑤海外紛争

ロシア・ウクライナ紛争を巡っては、日本は欧米よりの立場を取っているためロシアとは仲が悪くなってしまいました。
ロシアからは様々な品を輸入していますが、木材チップや合板などが輸入制限を受けてしまい、価格高騰を招く結果となりました。

⑥原油高、電気料金の値上げ

国内における資材の運搬も原油高の影響を受けてコストが増しています。
また建築資材の加工などにかかる電気代の値上がりも間接的に影響を与えています。

■今後の見通しは?

見通し資料イメージ画像

現状、建築資材の価格に関しては上昇する要素が複数あり、これが落ちつく要素は見受けられません。
木材や合板の価格は上昇を続けており、ロシア・ウクライナ紛争も解決の糸口すら見えていません。
円安に関しては今後の経済動向で変動が出るかもしれませんが、実際の建築資材の価格にどこまで影響するかは分かりません。
ということで建築資材の高騰はもうしばらくは続く予想です。
住宅購入を検討している方は、ハウスメーカーなどに相談する際、できるだけ費用を抑えられるように工夫しましょう。

■まとめ

まとめ画像

この回では建築資材の高騰について原因を探るとともに、今後の見通しについても見てきました。
建築費は年々上昇傾向が続き、円安等の影響もあって今後も上昇が続く見通しです。
紛争などの混乱が収まれば事態は大きく改善すると思われるので、是非とも早い解決を目指してもらいたいところです。