企業経営において資金調達は成長と安定を支える柱の一つであり、経営者の手腕が問われるテーマでもあります。
とりわけ中小企業や創業間もない企業にとって銀行からの融資は重要な課題で、銀行融資を活用できるか否かが経営の行方を大きく左右するのは間違いありません。
融資を申し込んだとしても希望どおりの金額を得られなかったり、そもそも審査に通らないなど思い通りに進まないケースは少なくありません。
本章では銀行融資の審査について概観しつつ、資金調達するための要点について解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
銀行が見る「審査の視点」を理解しておく

最初に理解しておかなければならないのは、銀行が融資審査の際にどのような視点で企業を見ているかという点です。
銀行は営利企業であり融資によって利益を得る立場にある反面、回収不能となるリスクは避けなければなりません。
ですから融資の審査においては返済の焦げ付きが発生しないかどうかという点が最大の判断基準となります。
そのために銀行は主に「定量的評価」と「定性的評価」の二つの面から企業を分析します。
定量的評価では決算書などの数値資料をもとに、売上や利益、キャッシュフロー、自己資本比率、債務超過の有無といった指標を評価します。
定性的評価では経営者の人物像や経営姿勢、業界の特性、事業の成長性といった数値では表せない部分を見ています。
数字が良くても経営者に信頼がおけない、あるいは事業に将来性が感じられないと判断されれば融資は却下されることもあります。
逆に現状はやや厳しい状況であっても、事業計画が明確で再建の道筋がしっかりしていて経営者の熱意や実行力があると認められれば審査が通る可能性もあります。
銀行は取引履歴や信用情報も当然意識して見ています。
過去に返済遅延があった、税金の滞納履歴がある、信用情報に事故記録があるといった場合にはそれだけでマイナス評価になります。
決算書の整備と見せ方を意識する

銀行融資において最も基本的かつ重要な資料が決算書です。
決算書は企業の経営状態を正確に表すものであり、いわば企業の健康診断書のような存在です。
これが整っていない企業はそもそも融資獲得の土俵に立つことができません。
中小企業では決算書の作成を税理士に任せきりにして、経営者自身が内容を把握していないというケースが見られますが、これは銀行に対して非常に悪い印象を与えます。
銀行担当者は経営者が自社の数字をきちんと把握しているかどうかを鋭く観察しています。
仮に財務内容がそこまで良くなくても、経営者が数字に強く、課題を認識し改善に取り組んでいる姿勢を示せれば前向きに評価されることもあります。
また決算書の「見せ方」を意識することも必要です。
節税対策として利益を極端に圧縮してしまうと、銀行からは「利益が出ていない=返済能力がない」と判断されてしまいます。
税金を減らしたい気持ちは理解できますが、融資を受けることを前提にするのであれば、ある程度の利益を確保しておくことが賢明です。
勘定科目の使い方にも注意が必要で、私的な支出が混在している、科目の分類が曖昧である、摘要欄が空欄で説明が不足しているといった状態では会計の整合性が疑われます。
決算書の整備においては丁寧な記録を心がけてください。
資金使途と返済計画を明確にする

銀行は「このお金を何に使うのか」「どうやって返済するのか」を重視します。
資金使途が不明瞭であったり、漠然とした返済計画しかない場合には審査は極めて厳しくなります。
運転資金なのか設備資金なのか、あるいは既存債務の借り換えなのか、資金の用途は具体的に明示する必要があります。
「資金繰りが厳しいから」といった理由では不十分であり、どの取引先への支払に充てるのか、どのような設備を導入するのかといったレベルまで落とし込むことが求められます。
返済計画も現実的でなければなりません。
毎月の返済額がキャッシュフローの範囲内に収まっているか、返済に無理がないか、既存の債務と合わせて返済負担が過重にならないかといった点を銀行は細かくチェックします。
この点で、借り入れ後の資金繰り表を作成し、入出金の見通しを示すことは非常に有効です。
経営者の信用力を強化する

審査における重要要素の一つに経営者自身の信用力があります。
どれだけ決算書が整っていても、事業計画が綿密でも、経営者に対する信頼がなければ融資は通らないでしょう。
信用力とは過去の経歴や肩書だけでなく、日々の姿勢や行動、言葉遣い、提出資料の丁寧さ、約束を守るかどうかといった総合的な印象によって作られます。
銀行担当者とのやり取りにおいて丁寧で誠実な対応を心がけることは信頼構築の基本です。
約束した資料を期日どおりに提出する、質問には正直に答える、問題点を隠さずに共有する姿勢が信頼を高めます。
過去に税金や社会保険の滞納がある、金融事故歴があるといった場合にはそれだけで大きなマイナスとなりますから、過去にそうした事実がある場合には事前に説明し、その後の改善努力を明確に伝えることが必要です。
銀行との関係性を日頃から築いておく

前項とも通じますが、信用力を強化するためには融資のタイミングだけでなく日常的に銀行との関係性を築いておくという視点が必要です。
たとえば普段から月次の試算表を提出している、経営方針を共有している、定期的に面談をしている企業であれば、融資申請時にも「日頃から透明性をもって経営している」と評価されやすくなります。
逆に何年も音沙汰がなかった企業が突然融資を申し込んでも、警戒されるのが自然な流れです。
まとめ
本章では銀行融資を成功させるポイントについて見てきました。
銀行融資を成功させるためには銀行の審査視点を理解し、自社の財務や経営の状況を客観的かつ正直に伝える努力が求められます。
融資は銀行との信頼を形にする行為でもありますから、誠実、丁寧に、また論理的に対話を重ねることで融資の成功率を高めることができます。
資金獲得をゴールとするのではなく、融資を通じ企業として一段成長する機会ととらえて臨んでください。








この記事へのコメントはありません。