中小事業者など資金調達面で苦労することが多い企業の資金繰りを支援するため、日本政策金融公庫という特別な金融機関が用意されています。
政府が100%出資するもので、一般の銀行のように利益を追求する性質が無く、日本経済の発展、推進という公的な目的で運用されています。
創業を志す方の強い味方となるので、ぜひ活用したいものです。
本章では日本政策金融公庫の創業融資について詳しく解説していきます。
従来の創業融資が拡充されてパワーアップ
日本政策金融公庫は長らく「新創業融資」というカテゴリーで資金繰り支援を実施していましたが、この制度がより使いやすくなって名称も変更されました。
新しく「新規開業資金」という名称で制度運営がされているので、今後はこの名称を覚えておくと良いでしょう。
名前だけでなく制度の内容面でもいくつか変更が出ています。
まずは「新規開業資金」の概要を押さえた上で、従来の制度との変更点も詳しく見ていきます。
「新規開業資金」の概要
新規開業資金はこれから創業を目指す方だけでなく、創業開始後間もない方も利用対象に入ります。
対象者や利用条件は以下のようになっています。
対象者 | 新規に事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
資金使途の制限 | ・新たに事業を始めるための資金 ・事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 ・廃業歴等があって創業に再チャレンジする方は、前事業に係る債務の返済必要資金としても利用可。 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 設備資金は20年以内(うち据置期間は5年以内) 運転資金は10年以内、廃業等で再チャレンジの方は15年(うち据置期間は5年以内) |
利率 | 基本的に基準利率が適用されるものの、女性や35歳未満、もしくは55歳以上、創業塾修了者など一定の者は特別に低い利率の適用を受けることが可能。 |
担保・保証人 | 希望を聴取の上で応相談 |
その他 | 経営者保証免除特例制度などの各制度と併用可。 |
基準利率は令和7年1月6日現在で、税務申告を2期終えている方は2.50~3.60%、税務申告を2期終えていない方は2.60~3.70%となっています。
従来制度からの変更点
では従来の新創業融資と、新たに創設された新規開業資金でどのような違いが生じることになったのか見ていきます。
基本的には改悪ではなく利用者の方にとって使い勝手がよくなるように変更が加えられたので、その点は安心してください。
従来の制度と比べて、新制度では以下のような改善点が加えられています。
①自己資金要件がなくなった
従来の新創業融資では原則として創業資金の10分の1を自己資金で用意することが必要でしたが、新しい新規開業資金制度では自己資金要件が撤廃されました。
自己資金の用意が難しい、できるだけ将来のリスクを回避して創業を考えたいという人にとって融資利用のハードルが下がりました。
ただし、明確な要件として付されることはありませんが自己資金を多く用意できれば融資獲得のチャンスが高まることは変わりません。
ある程度の自己資金を用意することで融資獲得のハードルが下がりますから、可能な限り自己資金の調達に努めることをお勧めします。
②無担保・無保証の利用拡大
従来の新創業融資制度でも一定の要件下で担保や保証人なしで支援を受けられることはありましたが、新制度になってその幅が広まりました。
新規開業資金では開業したての方や税務申告を2期済ませていない方なども担保や保証人無しで融資を受けられるようになっています。
もちろん担保や保証人を用意する方が融資のハードルは下がりますから、可能であれば提供を検討しましょう。
③返済負担の軽減
従来の制度では返済について設備資金が20年以内で据置期間が2年以内、運転資金は7年以内で据置期間が2年以内となっていました。
これが新規開業資金制度では、設備資金については返済期間20年以内で据置期間が5年以内、運転資金については返済期間が10年以内(再チャレンジの方は15年以内)で据置期間が5年以内となり、返済期間や据置期間に余裕を持つことができるようになりました。
必要書類
日本政策金融公庫の新規開業資金制度を利用するにあたり必要となる書類は以下の通りです。
・創業計画書
・設備資金を申込む場合は見積書
・法人は履歴事項全部証明書または登記簿謄本
・担保を希望する場合は不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
・運転免許証やパスポートなど顔写真がある身分証明書
・事業にかかる各種許認可証
・送金先口座の預金通帳の写し
必要書類はケースによって若干変わってくるので、相談の際に事前に確認するようにしてください。
また利用の申し込みをした後で面談が必要になり、その時には事業計画に関連する資料や資産・負債がわかる書類なども準備する必要があります。
担当者に来所してもらう場合は店舗や事業所の場所が分かる地図の用意を求められることもあります。
対面でなくオンラインでの面談も可能なので適宜検討してください。
まとめ
この回では日本政策金融公庫の創業融資について見てきました。
従来の制度が拡充する形で新しく「新規開業資金」制度が運用されています。
従来よりも利用者にとって使いやすくなっているので、新規創業を考える人や創業間もない方はぜひ検討してみましょう。
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