2020年、「給料ファクタリング」という個人向け資金調達サービスが違法な融資としてニュースに取り上げられました。

個人の場合、「急にお金が必要になる」「やりくりが困難になる」などの場面での対応は、一般的には「お金を借りる」という認識が強いものです。

ですが、「すでに多額の融資を受けている」「クレジットカードを利用限度額まで使っている」など、様々な理由によって借りられない方もいらっしゃいます。

そのような現金が必要な場面で、融資を受けることができない「個人」へ向けた金銭を準備する方法として「給料ファクタリング」は存在していました。

しかし、「ファクタリング」は事業者向けにも存在しています。

事業者向けの「ファクタリング」は、給料ファクタリングのように危険なものなのでしょうか?

同じ「ファクタリング」なのに、何が違うのか疑問に感じている方は少なくありません。

そこで、本記事では「給料ファクタリング」「事業者向けファクタリング」について、それぞれがどういったものなのか、違いはなんなのかについて詳しく解説していきます。

ファクタリングとは事業者向けの「債権売買取引」

ファクタリングとは事業者向けの「債権売買取引」本来ファクタリングとは、企業間で債権という資産を売買する取引です。

なかでも「売掛債権」を売買するファクタリングは最も知名度が高く、多くの企業で利用されているほど。

また、ファクタリングでは「企業」「クライアント(売掛先)」「ファクタリング会社」の三社で取引を行います。

取引方法にも種類があり「二社間ファクタリング」「三社間ファクタリング」の二種類の契約方法となります。

①二社間ファクタリング

二社間ファクタリングは売掛先への通知がなく、そのままファクタリング会社へ譲渡した売掛債権を入金する仕組みとなっています。

②三社間ファクタリング

三社間ファクタリングは売掛先にお金を借りる際に同意を得る必要があり、債権譲渡通知表や債権譲渡同意書と、書面で通知されるようになっています。

事業者向けファクタリングのメリット

事業者向けファクタリングのメリット事業者向けファクタリングのメリットには大きく次の2つがあります。

・売掛債権の支払期日よりも早期に現金化ができる
・バランスシートを良好に見せることができる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

①売掛債権の支払期日よりも早期に現金化ができる

通常1ヶ月〜3ヶ月かかる売掛債権の支払いですが、その支払い期日前に現金を得ることができるのがファクタリングです。

なんらかの資金調達が必要となった場面で、融資では間に合わず、資金回収も期日通りでは間に合わないというような、急を要するシーンで活用可能。

実際、事業者向けファクタリングの活用事例として多くのファクタリング企業が挙げています。

事業者向けファクタリングの歴史が50年ほどあることからも、このような需要は少なくなく、ファクタリングが有効に利用されてきたことがうかがえます。

②バランスシートを良好に見せることができる

ファクタリングではバランスシートをスマートに見せることができる「オフバランス化」といったメリットもあります。

オフバランス化に以下のような効果が。

・総資産額を少なく見せることにより、純資産利益率を向上させることができる
・売掛金が回収できずに貸し倒れのリスクを回避できる

オフバランス化とはバランスシートから資産や負債をオフし、これらを除くことで企業の会計状況を良好に見せる方法です。

バランスシート上で会計状態が良好ということは、「融資」を受けやすくなるということにも繋がります。

事業者向けファクタリングは、単なる資金調達手段としてだけでなく、このような活用方法もあることが大きなメリットだと言えるでしょう。

事業者向けファクタリングの種類

事業者向けファクタリングの種類また、事業者向けファクタリングには以下のように多くの種類があります。

①一括ファクタリング
②医療報酬ファクタリング
③国際ファクタリング
④商品在庫ファクタリング
⑤家賃収入ファクタリング
⑥保証ファクタリング
⑦資産担保融資

特徴をそれぞれまとめていますので、一つ一つ確認していきましょう。

①一括ファクタリング

通常のファクタリング契約に加え、売掛金請求業務を一括して引き受けるサービスで、通常「三者間ファクタリング」契約が前提となる契約になります。

②医療報酬ファクタリング

医療機関が国民保険や社会保険に対して請求する「医療報酬債権」を売却し、現金化するファクタリング契約です。

③国際ファクタリング

国内の貿易取引をする輸出企業が商品を輸入する外国の輸入企業から支払われる代金を確実に回収するため、海外のファクタリングと契約するものです。

④商品在庫ファクタリング

ファクタリング会社が企業の商品を買い取り、早期に資金化するサービスです。
ファクタリング側が利用者の会社へ出向きその場で商品の買取価格を査定し現金化します。

⑤家賃収入ファクタリング

家賃収入、管理費、仲介手数料といった不動産屋で得られる収入を債権としてファクタリング会社に売却し、先々の家賃収入を前倒しで受け取るファクタリング契約です。

⑥保証ファクタリング

企業が保有している売掛金や取引手形の未払いリスクをファクタリング会社が保証するファクタリング契約です。

⑦資産担保融資

資産担保融資は売掛金担保融資とも呼ばれ、企業が保有する売掛金、商品在庫、集合動産などの流動資産を銀行や信用金庫などの金融機関に担保として提供し、融資を受ける資金調達方法です。
以上、ファクタリングには7つの種類があります。

事業者向けファクタリングと給料ファクタリングの違い

事業者向けファクタリングと給料ファクタリングの違い結論から申し上げますと、両者は「全くの別物」です。
事業者向けファクタリングは「債権売買」、給料ファクタリングは「融資」となるからです。

給料ファクタリングは「ファクタリング」と名前がついていますが、現在は「融資」として扱われ、「貸金業の登録事業者」でなければ扱うことができません。

以前は「給料ファクタリングは給料債権の売買なので融資ではない」と、各給料ファクタリング業者はしていましたが、裁判で「給料ファクタリングは実質融資である」との判決が下されました。

加えて、警視庁も給料ファクタリングは「融資」と位置づけたことから、給料ファクタリングは「ファクタリングではない」と断言できるでしょう。

また、給料ファクタリングを運営していたのはほとんどが「闇金業者」です。

給料ファクタリングの手数料を金利として換算すると、1,000%を超える業者ばかりでしたので、どれほど悪徳な手法だったかが分かります。

そのようなことから、「事業者向けファクタリング」と「給料ファクタリング」は全くの別物ということが言えるのです。

給料ファクタリングについて

給料ファクタリングについて融資として判決を受けた給料ファクタリングですが、サービスの中身はどのようなものだったのでしょうか。
また、各業者がどのようにして宣伝をしていたのかについても紹介していきます。

①給料ファクタリングの特徴

給料ファクタリングにおいての最大の特徴はクレジットカードの審査が通らず、いわゆる「ブラック状態」になってしまった方でも利用ができる点です。
各業者は「債権の買取り」であるとし、「融資ではない」ので信用情報への記録はされないとアピールをしていました。

その結果、「金融ブラック状態」などの金銭に不安を抱える多くの人々が給料ファクタリングを利用する事態に。

金銭に困った人々へ訴求し、あたかも便利な資金調達手段であるかのように見せかけることが、給料ファクタリングの大きな特徴でした。

②給料ファクタリングのメリットとしていたもの

給料ファクタリングのメリットとして、以下のようなものが謳われていました。

 最短で即日入金できる
個人信用情報に載らない
アルバイトやパート、主婦の方でも利用可

それぞれどういうことなのか説明していきます。

最短で即日入金できる

給料ファクタリングは「二者間取引」で「審査が甘い」ため、最短で即日の入金対応ができることを前面に押し出していました。
「二者間ファクタリング」であれば、勤務先の承諾が不要なため即日の買い取りが可能になります。

また、「給料の履歴」と「本人確認書類」があれば、多くの場合は審査が通過可能でした。

そのため、申込みから入金までが早く、最短で即日入金を可能としていました。

個人信用情報に載らない

普段私たちが融資を受けるさい、「融資を受けた」という情報は信用情報機関が保有している個人信用情報に記載されます。
ですが給料ファクタリングでは、お金の借り入れではなく「給料債権の買取」と各業者はしていたため、個人信用情報に利用履歴が記載されることはありませんでした。

そのため、これ以上融資を受けられない、または、すでに金融ブラックとして登録されている人でも利用することができてしまいました。

アルバイトやパート、主婦の方でも利用可

給料ファクタリングは、給与明細があれば誰でも利用できるという点からアルバイトやパートでも簡単に契約することが可能でした。

まとめ

まとめ事業者向けファクタリングは「歴史のある、事業者にとって必要とされてきた利便性の高いサービス」です。
また、活用方法も資金調達のみではありませんので、必要に応じて上手く利用することで、経営でプラスの作用をさせることもできるでしょう。

反対に、給料ファクタリングは「闇金業者ばかりの、警視庁でも注意喚起がなされている危険なサービス」になります。

現在では判決が出たことによって、給料ファクタリング業者は姿を消していますので、トラブルに巻き込まれることは少ないでしょう。

給料ファクタリングとはなんだったのか?と問われれば、「ファクタリングのイメージダウンをした悪の存在」といっても過言ではありません。

ファクタリングとは本来、事業者の皆様の経営をサポートする存在です。

そのことが本記事の内容であなたに伝われば、ファクタリング業者としてこの上なく嬉しく思います。

また、こちらでファクタリングの本来のメリットについても紹介しています。

ぜひ、ご覧ください。

ファクタリングのメリット