残念なことに、日本は海外に比べて金融リテラシーが低いとされています。
昔気質の人などはお金のことを語るのはあまり良くないことだという意識を持つ人もいるようですし、日本人はお金を稼ぐということに対してネガティブなイメージを持つ人が多いとされています。
しかし必要な収入を確保することは大切なことですし、近年はお金の管理運用に関する知識の重要性が益々高まっています。
そのため国は金融教育の義務化を決め、国民の金融リテラシーの向上に動き出しています。
本章ではこのテーマについて深堀してみたいと思います。

■金融教育義務化とは?

お金と教育イメージ

実はこれまでも金融に関する内容が授業で扱われることはあったのですが、基本的には単発で行われるものであり、体系的な教育システムとしての運用はされていませんでした。
今回の義務化では学習指導要領の改訂が行われ、小中高と体系立てた金融教育を可能にするものとして運用が始まっています。
この運用は今年2022年の4月からすでに始まっています。
体系的な金融教育とはどういうものかというと、例えば英語学習をイメージすると最初はアルファベットから始まり、英単語、熟語を少しずつ覚え、これを文章として構成する力を身に着けていきますよね。
そして少しずつレベルを上げてき、難しい言い回しや表現を用いることができるようになります。
いきなり難しい内容を扱っても理解できませんから、まずは基礎を覚え、段々と難しい内容を理解していけるように進めていくのが体系的な教育です。
金融教育もこのように一貫性を持った体系的な教育を施すことにより、国民の金融リテラシーの総合的な向上を図ることが期待されています。

■必修化される内容は?

金融やわらかいイメージ

実際に授業で扱われる内容は、当然児童生徒の発達段階に合わせて難度が設定されていますから、小学校では簡単な内容を扱い、中学校では少し難度が上がり、高校では実践的な内容が扱われます。
ですから小中高で実際の内容は異なるとして、内容的には4つの観点を基にしたプログラムが設定されることになります。

以下で簡単に見てみましょう。

①家計管理や生活設計について

最も身近な内容となるのがこの観点で、お金に関する収支の管理や資産形成について、社会保障や事故・病気に備えることの重要性などを扱います。

②経済や金融の仕組み

金利や物価の概念、経済の仕組みなどを理解して、お金の役割や市場経済の原理について理解を深めます。

③消費生活やトラブルの回避

自立した消費者を育成できるよう、消費者保護につながる知識の習得を行います。
契約の意味や法的効果を知り、生活上でトラブルに巻き込まれないようにしたり、多重債務に陥らないようにします。

④キャリア教育

経済的自立を目指すために、働く意義や職業選択などについて理解を深めます。
これにより、実社会で生き抜いていく力を身に着け、社会のルールを順守しながら自立した生活を維持できるようにします。

■なぜ義務化されたのか?

仮想通貨イメージ

金融教育が義務化された背景にはいくつかの理由があるとされています。
一つは上でも見たように海外に比べて日本は金融リテラシーが低く、お金に関するトラブルもよく見られることが挙げられます。
自立した消費者として社会で生きていけるようにするには体系的な教育システムが必要です。
また近年の民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられたことも大きく影響しています。
有効な契約が18歳から結べるようになったため、契約トラブルなどに巻き込まれる人が増加するとの懸念があります。
トラブルに巻き込まれないようにするには早い段階からの教育が大変重要になります。
また近年は老後の生活について不安を感じる人が多いと言われています。
自身の老後の生活設計を満足に行えないと、老後貧乏などの言葉に代表されるように自分が苦しい思いをしなければなりません。
人生の早いうちから老後の生活設計を図れるようするためにも、金融教育は必須と言えるでしょう。

■義務化で想定される問題

金融悩みイメージ

義務化されるにあたり、教育現場で使用する教材なども準備はされているようですが、扱う教員自身の金融リテラシーがないと効果的な教育ができません。
多くの教員は自身が体系的な金融教育を受けてきたわけではないでしょうから、現場に立つ教員によって授業の質が違ってくるということは考えられるでしょう。
今後この方面の問題も浮き彫りになってくるものと思われます。

■まとめ

教育まとめ画像

本章では金融教育の義務化について深堀してみてきました。
この義務化では体系的な金融教育が可能になることから、今後十数年かけて国民全体の金融リテラシーの向上が期待されるところです。
ただ2022年から始まったものですので、効果が出るまでには時間がかかることと、実際に効果的な授業がなされるのかという疑念は残ります。
それでも必要な修正は適宜図られるでしょうから、日本全体で金融リテラシーの向上が図られることをぜひ期待したいものです。